法務省の入管法改正案をご覧になったことはありますか
みなさま、こんばんは。
みなさまもご存知のように、最近は臨時国会で行われている入管法改正案に関する論議にともない、連日連夜様々なマスメディアやSNSなどで外国人労働者受け入れに関するトピックが話題になっているようですよね。
既存の技能実習という在留資格、ビザで来日したものの失踪した外国人技能実習生に支払われていた賃金が最低賃金を下回っていたケースが多数あったようであるという問題が大きくクローズアップされている他、特定技能という新しい在留資格、ビザの新設が注目されているようですね。
その他、あまり目立った形では取り上げられていないようであるものの、日本の大学を卒業する/した外国人留学生の就労条件を緩和するというような大きな改変も盛り込まれている法律のようです。
みなさま、法務省の入管法改正案をご覧になったことはありますか。
法務省の入管法改正案は法務省の以下のURLに掲載されているようです。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00017.html
出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案
相当わかりにくい法案ではあるのですが、ご関心、ご興味をお持ちの方々は大ざっぱにでも目を通されておくと、今後どのようなことが起き得るだろうかということが予測、推測しやすくなるのではないかと思います。
当エントリーをお読みいただき、ありがとうございました。お読みいただいた方々のご参考になれば幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
第197回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説で中小企業で働くベトナム人に言及
みなさま、こんばんは。
すでにご存じの方々も多いことかと存じますが、昨日(2018年10月24日)、安倍首相が
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement2/20181024shoshinhyomei.html
第百九十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説
という演説を行ったようですが、
半年前に来日されたばかりの、ベトナムのクアン国家主席が先般お亡くなりになられました。心から御冥福をお祈りします。
来日の際訪れた群馬の中小企業では、ベトナム人の青年が、日本人と同じ給料をもらいながら、一緒に働いていた。そのことを、クアン主席は大変うれしそうに、私に語ってくださいました。
「彼にとって、大きな誇りとなっている」
これは、私たちにとっても誇りであります。世界から尊敬される日本、世界中から優秀な人材が集まる日本を創り上げてまいります。
という一節があり、群馬県の中小企業で働くベトナム人青年(そのベトナム人青年がどのような在留資格、ビザで働いているのかは調べていませんが、多少気になるところです)のことが取り上げられたようです。
日本政府が大人数のベトナム人外国人労働者の受け入れを想定しているであろうということは予測、推測していたのですが、安倍首相が所信表明の演説で中小企業で働いているベトナム人のことに触れることは想像していませんでした。興味深いことなのではないかと思います。
安倍首相の所信表明演説で『入国管理法を改正し、就労を目的とした新しい在留資格を設けます』という箇所があるようですが、それは新設されることになっている「特定技能」(仮称)の在留資格、ビザのことを指しているのではないかと思われます。
「特定技能」(仮称)の在留資格、ビザに関しては、長文ですが、
https://nihongowakarazu.hatenablog.com/entry/2018/10/23/200000
日本社会が外国人労働者受け入れを決めるにあたり考えるべき重要ポイントは?
にまとめました。ご関心、ご興味をお持ちの方々は上記のエントリーも合わせてご参照いただければ、幸いです。
当エントリーをお読みいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
日本社会が外国人労働者受け入れを決めるにあたり考えるべき重要ポイントは?
日本政府による新設される予定の「特定技能」(仮称)という在留資格、ビザの概案が公表され、明日(2018年10月24日)召集され2018年12月10日まで開催される臨時国会でも重要な審議事項の1つになるようですね。日本社会が外国人労働者の受け入れを決めるにあたり考えておくべき重要なポイントにはどのようなものがあるでしょうか。
日本政府による「特定技能」(仮称)という在留資格、ビザの概案
日本政府による「特定技能」(仮称)という在留資格、ビザの概案が公表されました。
2018年10月12日付で内閣官房副長官補本室が
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai2/gijisidai.html
外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議
というページで、
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai2/siryou1.pdf
出入国管理及び難民認定法及び法務省設置の一部を改正する法律案の骨子について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai2/siryou2.pdf
新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について
という資料を公開しているようです。
日本社会が外国人労働者を受け入れを決めるにあたり議論が必要と思われること
日本社会が外国人労働者を受け入れを決めるにあたり議論が必要ではないかと思われることを数点に絞って挙げていきます。2018年10月下旬の時点で、「特定技能」(仮称)という在留資格、ビザに限定せずに、日本の外国人労働者受け入れに関して、考えたほうがよいと思われることをまとめておきます。
1. 外国人労働者受け入れにより日本人の賃金上昇が抑制されるのでは?
「特定技能」(仮称)という在留資格、ビザに関しては、人出不足による人件費増を嫌う日本の産業界の強い意向を受けて外国人労働者に門戸を開放するという一面があるように思われ、日本人労働者の賃金上昇が抑制されるのではないかということが懸念されているようです。個人的には、はっきりとした形で日本人労働者の賃金上昇がみられるまで少なくとも数年間は、外国人労働者の受け入れは行わないほうがよいのではないかと思っているのですが、当エントリーをお読みいただいているみなさまは、いかがお考えでしょうか。
2. 外国人労働者の受け入れが前提になった社会で受け入れがストップしたらどうなる?
外国人労働者を受け入れる制度が開始された場合、外国人労働者受け入れが半ば前提の社会に移行していくのではないかと思われますが、外国人の送り出し国の経済事情の大きな変化や政変等により、突然外国人の受け入れが中断を余儀なくされるような事態になることも想定しておいたほうがいいかもしれません。
3. 不況になっても、人手不足が解消されても、外国人労働者は都合よく帰国させられない
景気変動で日本が不況に陥った場合や相当年数が経過後多くの分野で人手不足が解消された場合、日本政府は外国人労働者を帰国させようという政策を打ち出すようになるかもしれませんが、日本が外国人労働者の送り出し国よりも生活水準や賃金、医療、教育のレベルが高いなら、多くの外国人労働者は引き続き定住を希望し帰国しない可能性が高いでしょうし、日本政府や日本社会が外国人労働者に帰国を強制することはできないのではないでしょうか。
4. 外国人労働者定住に備えて、家族サポート・教育サポートの充実、高齢化対策が必要
日本国内の人手不足対策や労働力の補完に目が行きがちですが、日本に大人数の外国人労働者が入ってきてその外国人労働者の相当数が定住するようになった場合に備えて、その労働者が家族をつくる、教育を受ける、高齢化したときの介護をする等々のことが必要になるように思われます。教育に関しては、外国人労働者に対する日本語教育のサポート体制を築くことも大事ですが、将来的には外国人、非母語話者を対象とする日本語教育(特に子ども向けの日本語教育)と学校の教科を理解するための教科教育(とその準備教育)が重要になるのではないかと考えています。
5. 仮に定住しない外国人労働者を活用できたとしても、受け入れ企業の大きな問題を先送りするだけでは?
昨年(2017年)9月、中日新聞で外国人研修生、技能実習生を受け入れてきた岐阜の縫製会社を取材した
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/newswotou/list/CK2017090302100011.html
外国人実習生に頼る岐阜アパレル
という記事は、今後日本社会、特に日本の中小企業、零細企業が外国人労働者を受け入れることの問題点も浮かび上がらせる示唆に富む内容なのではないかと思います。
実習生はどんなに技術が上達しても、三年で帰国させなければいけない。九三年に制度が始まって二十年余り。日本人を育てる余裕がないまま、実習生に依存してきた結果、産地を支えていた高度な技術力の継承は後手に回った。岐阜アパレルの全盛期を担った技術者は高齢になり、モノづくりの基盤が失われつつある。
昨今の労働力不足を補うため、外国人を積極的に受け入れるべきだという議論がある。だが、結局は産地に根付かない外国人の力を借りて、本当に未来を描けるのか。実習制度の改正で十一月からは一定の条件を満たせば最長五年の受け入れが可能になるが、制度の本質は変わらない。企業は人材不足を埋めるための急場しのぎではなく、ビジョンを持って実習生の受け入れを判断するべきだろう。
という指摘がされている箇所が重要だと考えています。現時点(2018年10月の時点)で日本政府が説明しているように、今後「特定技能」(仮称)という在留資格、ビザ等で受け入れる外国人労働者が、仮に定住しない外国人労働者として外国人が日本で数年間だけ労働するということになった場合でも、日本の様々な産業が抱える大きな問題は解決、解消せずに、外国人労働力によって単に一旦先送りされるだけになる可能性が高いように思われます。
6. 日本は戦略的に縮小に向かうべきではないかという論者のご意見
産経新聞社の河合雅司氏は下記の記事
https://www.sankei.com/column/news/181021/clm1810210007-n1.html
外国人労働者の拡大、本当に日本は救われるのか
で、
外国人の受け入れが進めば、人口減少を前提とした日本社会の作り替え作業は遅れる。そもそも外国人労働者の大規模受け入れは、現在の社会のサイズや過去のビジネスモデルを維持しようという発想であるが、実際にはこうした努力は長続きしない。
と指摘されているようですが、ごもっともな点もあるのではないかと思われます。河合氏は、『社会保障など予期せぬコスト増にもつながる』、『長期的視野に立って「人口減少に耐えうる社会」へと作り替えを急ぐほうが賢明だ』、『「戦略的に縮む」努力を放棄した時点で、日本は衰退の道を歩み始める』等の論点も挙げられているようです。『外国人が一定の人口シェアとなれば地方参政権を求める声も強まることも予想される』という指摘もあり、台湾のように、外国人の住民の選挙投票が政治家の当落にインパクトを与え得るような社会になるということもあり得ないことではないように考えられます。外国人労働者の受け入れに賛成される方々にとっても反対される方々にとっても河合氏の上記の記事は興味深いのではないかと思います。
7. 外国人労働者の人権とは?――外国人労働者を受け入れることに対する日本弁護士連合会の宣言
2018年10月5日付で、日本弁護士連合会が下記のような宣言を
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2018/2018_1
新しい外国人労働者受入れ制度を確立し、外国にルーツを持つ人々と共生する社会を構築することを求める宣言
を公表しているようです。外国人労働者の人権に関して重要な指摘がまとめられているようです。
8. 「特定技能」という在留資格で受け入れる外国人労働者を移民と言うか言わないかという問題
2018年10月14日の東京新聞の記事、
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201810/CK2018101402000121.html
単純労働に新在留資格案 政府「移民」打ち消し躍起
では、日本政府が単純労働分野での就労を想定した在留資格(「特定技能」(仮称)という在留資格、ビザ)に関して『「移民政策とは異なる」と繰り返し強調し』ていることが取り上げられています。
一部の例外的なケースを除けば、技能を実習するという建前が形骸化し大半が単純労働力の受け入れになっているようである技能実習生に対しても、日本政府は実態には合わせようとはせず建前論を押し通し続けているぐらいですので、今後も「(日本政府が)移民と言わなければ移民ではない」という論法で切り抜けようとするのではないかと推測しています。
日本社会が外国人労働者を受け入れを決めるにあたり考えておいたほうがよいのではないかと思われる重要なポイントをまとめてみました。当エントリーをお読みいただいた方々のご参考になれば幸いです。
当エントリーをお読みいただき、ほんとうにありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
日本に100万人を超えるベトナム人長期在住者が住むような時代が到来したら?!
2018年の在留外国人数は過去最高
みなさま、はじめまして/おはようございます。
先日(2018年9月19日)発表された法務省の速報
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00076.html
平成30年6月末現在における在留外国人数について(速報値)
によると、2018年6月末時点における外国人中長期在留者数は231万1061人、特別永住者数は32万6190人,合計の在留外国人数は263万7251人となり、過去最高の在留外国人数となったようです。ベトナム人(より正確にはベトナム国籍を有する外国人)が29万1494人で昨年と比べ2万9089人増加(11.1%増)、ネパール人(より正確にはネパール国籍を有する外国人)が8万5321人で昨年と比べ5283人増加(6.6%増)となったことが特記事項のようです。
ベトナム人(より正確にはベトナム国籍を有する外国人)は、中国人(より正確には中国国籍を有する外国人)74万1656人、韓国人(より正確には韓国国籍を有する外国人)45万2701人に次ぎ、第3位をしめるようになりました。ちなみに、第4位はフィリピン人(より正確にはフィリピン国籍を有する外国人)で26万6803人のようです。
2018年は外国人労働者受け入れ元年になるか?
2018年6月、日本政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2018」
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/decision0615.html
経済財政運営と改革の基本方針2018
には、日本政府がこれまでの受け入れ状況をはるかに超える外国人、特に外国人労働者の積極的な受け入れ政策を実現しようと考えているであろうことが読み取れるようです。
この政策に対して、一例ですが、昨日(2018年10月2日)に東洋経済オンラインに掲載された
https://toyokeizai.net/articles/-/239779
日本の「移民政策」を成功させる真っ当な方法
政府の外国人労働者受け入れ拡大策は万全か
という記事にあるような提言をされている識者の方がいらっしゃるようです。
その一方で、難民支援協会というNPOのウェブサイトにある(先ほどとは他の)識者の方へのインタビュー記事
https://www.refugee.or.jp/jar/report/2017/11/24-0001.shtml
日本の移民政策の課題と展望−研究者インタビュー
によると、
日本の外国人労働者政策の建て付け上、大卒のホワイトカラーや実務経験者など専門職・技術職以外は働いてはいけないことになっていますが、技能実習生や留学生が、たとえば工場やコンビニなど私たちの日常を支えるような業界で働いている現状は周知の通りです。つまり、移民の受入れは認めないが、妨げているわけでない、いわゆる「単純労働者」の受入れも認めないが、やはり妨げていない。日本の政策には、このような二面性があり、この二面性は、外国人の定住を円滑化させる政策を立案する下地の形成を阻害してきたといえます。
というご指摘もあるようです。
私たちは日本社会や日本政府が外国人を受け入れるときの重要な傾向や特徴が大きく変わるとは考えにくいだろうと予測しています。おそらく今後、2018年以降、前述の「経済財政運営と改革の基本方針2018」が本格的に実施されるようになれば、日本では不十分な事前対応や準備しかなされない状況で大人数の外国人(特に外国人労働者)が受け入れられることになり、大きな事件やトラブル、問題が発生した後で事後的になされるべきであった対応が行われていくことになるのではないかと推測しています。
遠からぬ将来、日本に100万人を超える日本語があまりよくわからないベトナム人長期在住者が住むような時代が到来したら、どうする?!
今後、2018年以降、「経済財政運営と改革の基本方針2018」が本格的に実施されるようになった場合、ベトナム人やネパール人、ミャンマー人(ビルマ人)、スリランカ人が外国人労働者として多人数受け入れられるようになるのではないでしょうか。特にベトナムは比較的長期にわたり半ば以上国策として自国の労働者を各国に送り出してきた歴史的経緯もあり送り出しに積極的なようで、ベトナム人は今後日本で受け入れることになる外国人労働者、外国人労働力の最有力候補(の1つ)ではないかと考えてもよいのではないかと思われます。
「経済財政運営と改革の基本方針2018」がどのぐらい本格的に実施されるかということや今後のベトナムの経済事情等にも大きくよることでしょうが、1つの可能性として、遠からぬ将来、日本各地に100万人を超える日本語でそれほど高度なコミュニケーションができないベトナム人が長期的に住むような時代が到来するかもしれないと予想しています。
移民という言葉を使うか使わないかは、とりあえず棚上げしておきましょう。
先ほどの仮定の話ですが、遠からぬ将来、日本各地に100万人を超える日本語で十分なコミュニケーションが取れないベトナム人長期在住者がいるような時代が到来したら、みなさまはどうされますか、受け入れるためにどのような準備が必要になるとお考えでしょうか。受け入れたベトナム人が日本で家族をつくることや高齢化することに関してどう思われますか。日本社会や日本政府が日本に長期間在住するベトナム人に日本語教育の機会を設けることで日本語でできるかぎりコミュニケーションが取れるようになってもらうことは、どのようなメリットがあると思われますか。逆にどのようなデメリットがあると思われますか。
私たちも確かな回答を持っているわけではありませんが、みなさまと情報交換や意見交換し、みなさまのご感想やご意見、お考えをお聞きし、時にはみなさまのお知恵をお借りしたいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。